…「まじかよ…」


落ちたテンションを更につき落とすように、外は雨が降っていた。

一足遅かったらしい。古典的に、僕は肩にかけたカバンをずり落とした。

無情にも雨足は、弱まるどころか強まるばかり。


「ついてねぇ」


げた箱の柱にもたれかかり、弱くなることを知らない雨を見つめていた。

手を空に差し出すと、冷たい雨が掌を冷やす。

曇り空から落ちてくる銀色の雨粒が、不思議に色を変えつつ春の空気と混ざりあっていた。


あ…少し弱まった?










「傘、ないの?」









一瞬、雨の音が消えた気がした。

代わりに耳に届く、透き通った声。

視界の横に入る、ストレートの髪は見覚えがある。

あの黒目がちの瞳が、そこにははあった。








紛れもない。





彼女だった。