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キャンプから帰る日。

荷物を車に乗せ終えた僕たちは、親父さんが来るまで各々好きな時間を過ごした。

駐車場の前の広場からは、僕たちの街が一望できる。

僕は明日可を誘って、そこから街を見下ろしていた。


側に座る明日可。


黙ったままの僕。


どうしても昨日のことを思い出してしまい、照れくさくて、でも幸せで、僕は何も話せなかった。

明日可が初めてのキスの相手でもないのに、胸の高鳴りは止まることを知らなかった。


「…広いんだね」

明日可が口を開く。

「…うん」

僕はそれに答える。


幸せって、こういうことなのかな。

…なんて、ロマンチストっぽく考える。


「…また、来たいね」
「うん。…今度は…」


そっと明日可を見た。

2人の目が合う。
明日可が微笑む。

飲み込んだ言葉は、多分2人共同じだった。


僕等は自然に手を重ね、視線を街へと戻した。

僕等が住んでる街。
僕等の出会った街。

飲み込んだ言葉を、胸の中で繰り返す。


『今度は、2人で』