しばらくの沈黙の後、先に口を開いたのは僕だった。
「…体、大丈夫なの?」
「うん。数年前に、移植手術受けれたから…。今はもう、大丈夫」
明日可の答えに、今までずっと抱えていた何かがすっと抜けていく様な気がした。
「そっか…」
肩の力が少し抜ける。
…よかった…。
「…シュウ」
明日可の足が止まる。
僕も、思わず足を止めた。
前を向いたまま、明日可は言った。
「あたし…沢山約束破ったね。強くなるって…あんなに約束したのに。あたし…強く、なりきれなかった」
僕は黙って聞く。
「怖かった。手術決まっても、成功しても、大丈夫だって言われても…ずっと、怖かった。病気が悪化した時も、手術が成功した時も、シュウに…なんて言えばいいのか、わからなかったの。あたしは、『大丈夫』だなんて…言えなかった」
ザァッと、波が引く。
「…『大丈夫』って言葉を、軽々しく使えなかった。そう言った直後、この心臓は止まるんじゃないかとか…紙一重で、生きてる気がしてたの。そんなあたしを…シュウに、知って欲しくなかった…」
微かに、明日可の肩が震える。



