『幸福の再来』
…僕等はどちらも、鍵を拾うことができなかった。
ゆっくりと、顔を上げる。
懐かしい長い茶色い髪が、さらっとなびいた。
…見間違えるはずがない。
変わらない黒目がちの瞳が、まばたきを忘れた僕を飲み込むように見つめる。
震える口で、僕はゆっくりと言った。
「…明日可?」
…彼女の口元が、動いた。
「シュウ…」
…変わらない透き通った彼女の声が、僕の名前を呼ぶ。
泣きそうな程懐かしく、愛しい響きで。
多分僕等は数分間、お互いを見つめたままだった。
…動くことが、できなかった。
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