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しばらく喫茶店で時間をつぶし、昼時を過ぎた頃を見計らって店をでた。
ドアを開けると、爽やかな秋の空気が流れ込む。
鞄を肩にかけ直して僕はギャラリーへと向かった。
…海の香りが心地いい。
レンガ造りの階段に足をかけた瞬間、あの錆び付いた鐘の音が聞こえた。
お客さんが出てきたのだろう。
…丁度良いタイミングだったな。
階段を登りながら、降りてくる足音に挨拶をしようと顔を上げた。
…風が、秋と海の香りを運ぶ。
目が、あった。
…気がした。
―カシャン
突然顔を上げたので、思わずぶつかってしまった。
相手の鞄から、鍵らしきものが落ちる。
「すみませんっ!」
「あ、いえ…」
拾おうと手を伸ばした。
相手も同じ様に手を伸ばす。
…瞬間、脳裏に電流が走った。
鍵についたキーホルダー。
少し色は剥げていたが、僕が見間違えるはずがない。
…くまとスズランのオルゴール。
秋桜の言葉が、ふいに浮かんだ。



