コスモス


「じゃ…ちょっと行ってくるわ。お客さん来そうな予感したら戻ってくるし」
「あははっ、予感ですか!はい、じゃあそれまでゆっくりしてきて下さい」

明るい彼女の笑顔に見送られて、僕は来たばかりのギャラリーを一度後にした。





…僕が昼食場に選んだのは、ギャラリーの側の小さな喫茶店だった。
個展の準備の時によく利用していた場所で、アットホームな雰囲気が心を落ち着かせてくれる。

いつもの様にサンドイッチとコーヒーを頼み、僕は鞄からアルバムを取り出した。

今回の個展で使った写真のポラロイドだ。

一枚一枚、ゆっくりと捲る。



春の体育館。

雨降りのげた箱。

クッション付きの自転車。

満天の星空。

病院前の下り坂。

夕焼けの階段下。

冬のあぜ道。


あの、コスモス畑。






コトンとお皿が置かれる。
軽く会釈をして、僕はアルバムを閉じた。


…この個展を開くことによって、僕はひとつの区切りをつけるつもりでいた。

僕の、長い長い恋に。


サンドイッチを口に運ぶ。
コーヒーで流し込み、僕は軽く目を閉じた。







…うまく、できそうにないな。