……………


懐かしい空気が、喫茶店の中には満ちていた。

変わらないマスターがカップをキュッと磨いている。

秋風が吹き込んだと思った瞬間、カランと音が響いた。


「おっせーよっ!」


懐かしい笑顔。
懐かしい顔ぶれ。

…一瞬で、あの頃へ戻る。


「ごめんごめん!こいつ支度遅くって…」
「はぁ?何いってんの!タケ君が遅刻したんでしょ!?」

みんなが座る席に向かって歩きながら、ミキはタケに軽く殴りかかった。

「ははっ、お前ら相変わらずだなぁ」

カズが笑いながら席を引く。
二人が席につくと、益々懐かしい雰囲気が増した。

「ま、とりあえず…」

コホンと咳払いをし、誠二が声を張り上げて言った。











「結婚おめでとーっ!!」










喫茶店の中が一瞬ざわつく。
いつも冷静なマスターもカップを拭く手を止めた。

「ば…っ、声でけぇよっ!!」
「あ、すみません、何でもないですから!」

カズが誠二の頭を叩き、千歌が立ち上がって周りに頭を下げる。
タケとミキは、一瞬呆然としたがすぐに笑顔になった。