コスモス





…コスモスだった。




小さな中庭に咲き乱れているのは、明日可の好きなコスモスだった。





食い入る様に中庭を見つめる僕に向かって、エマは言った。



「…こっちに来てすぐに、明日可が種を蒔いたの。この花を見ると『約束』を守ることができる気がするって、アスカは言ってたわ。この花の強さをわけてもらえる気がする…って」



『約束』




…覚えていた。

…守ってくれていた。



僕等の約束。



『生きる』という、約束。













「『約束』が何なのかはわからなかったけど…あの子はきっと、コスモスと自分を重ねていたのね。引っ越す前も、ここだけは変えないでってずっと言ってたから…」



僕はエマの言葉を聞きながらそっとコスモスに近づいた。

風に揺れるコスモスに触れる。

柔らかく、しなやかな感触。



『センセーションダズラー。このコスモスの名前』


『…強いなぁ、コスモスは』


『強くなるから』


『…好きよ』






『好きよ…』