「あの子、言ってたわ。『シュウの綺麗な思い出になりたい』…って。今ならきっと、そうなれる。シュウの思い出の中で生きたいんだ…って」
僕は黙って話を聞いていた。
明日可は、そういう子だ。
例え自分が傷ついても、相手が一番傷つかない道を選ぶ。
…そういう子だった。
「…だから移転先の住所は教えなかった。その代わりシュウから届いた手紙は、ちゃんと私からあの子へ送っていたわ。ちゃんと届いてる。それだけは安心して」
カップを置くカチャリという音が部屋に響く。
…正直、少しもショックじゃないといえば嘘だった。
ここに来れば明日可に会えるという希望は、もうなくなったのだ。
それでも…。
「…ありがとうございます」
僕はエマを見て言った。
「俺が知らない間の明日可…ここに来て、少しはそれを知ることができた気がします。俺は…もう、それだけでいいです。正直…どんなことを言われても、俺の気持ちは変わらないんで」
きっともう、一生変わることはない。
「好きなんです。明日可が。…今、好きなんです」



