「アスカのお母さんはね、あたしのいとこなの。アスカとは遠い親戚になるんだけど…あの子の病気のことは、聞いてたわ。こっちでの治療を勧めたのも、あたしなの」
僕のカップに紅茶を注ぎながら、エマは続ける。
「こっちに来た頃は、よくあなたの話を聞かされたわ。手紙が届く度に幸せそうな顔をして一日中読んでた。でも…」
ティーポットをコトンと置く。
「あの子が来てから一年後くらいに、病気が悪化したの。もう…その時通っていた病院じゃ治療ができないくらいに。だからアスカは、もっと大きな病院に移転が決まったの。ここからも引っ越さなきゃいけなくなって…」
エマの話を聞きながら、僕はなんとなく予感していたことが当たっていることに気付いていた。
…明日可は、ここにはいない。
そんな僕を気にしながらも、エマは話を続けた。
「引っ越し先の住所をシュウに教えなくていいのか、アスカに聞いたわ。でもアスカは…教えないで欲しい…って。もう…自分のことは、忘れたほうがいいんだって…」
僕はゆっくりと、紅茶に手を伸ばした。



