コスモス



……………


彼女が入れてくれた紅茶は驚くほど美味しくて、僕は心が落ち着いた。


あの後、立ち話もなんだからと彼女、エマは家へと入れてくれた。
家の中は日本とは違う空気が満ちていて、何だか不思議な気分だった。

…紅茶のカップを置き、辺りを見渡す。

大きな暖炉。
レンガ造りの棚。
ドライフラワーで作ったリース。

それらを見渡しながら、僕はぼんやりと思った。




…どこにも明日可を感じるものが、ない。





「日本とはやっぱり雰囲気が違うでしょう?」

クッキーをコトンとテーブルに置き、エマは言った。
はっとして答える。

「あ、はい。なんか…不思議な気分です」
「ふふ。アスカも同じこと言ってたわ」

…アスカ。

僕は軽く息をつき、言った。


「あの…明日可は今…」


紅茶を飲んでいたエマは、一瞬動きを止めた。
ゆっくりとカップを置き、口を開く。


「やっぱり、連絡はないのね」


少し、悲しそうな目だった。
エマはゆっくりと話し始めた。