一瞬昔を思い出し、僕たちは目を伏せた。

先に口を開いたのはミキだった。





「…明日可のこと?」






僕は軽く頷く。


「…俺、ミキに会わないようにしてたの、明日可のこと聞きたくなかったからなんだ。ミキなら知ってると思うけど…二年くらい前から、明日可からの連絡が途絶えた」

カフェオレのカップを見つめながらミキは黙っていた。
…あの日の様に。

「別にその理由とかを聞こうとしてるわけじゃないんだ。明日可が今、誰を想ってるだとか、俺ともう会いたくないだとか…そういうことは、正直どうでもいい」

びっくりした様にミキは顔を上げた。僕はその目を見つめながら言う。


「1つだけ、聞きたい。今まで聞きたくなくて逃げてたこと。…明日可、今…」
「生きてるよ」


僕の言葉を遮り、ミキは言った。

「大丈夫。生きてるよ。…明日可が死ぬわけないじゃん」

軽くほほえみ、ミキは言った。
少し目を丸くしたが、僕もすぐに目を細めた。


「…そっか。ならいいんだ。どんな形でも…生きててくれたら、それでいい」



…例え、僕をもう想ってなかったとしても。