……………


カランというベルの音が鳴る度に、僕は雑誌から目を入り口へと向けていた。

入って来たのは仕事途中のサラリーマン。

軽くため息をつき雑誌に目を戻す。




…外は秋晴れ。

暑さも少し和らいだ様に思えるが、まだまだ汗がにじみ出る9月半ば。

僕は懐かしい喫茶店に腰をおろしていた。


懐かしい人と会うために。







…さっきのサラリーマンが入ってきてから数分後、再びベルが鳴った。

秋の日差しが店へ差し込む。

小柄な体にシフォンのスカート。
長い髪がサラリとなびく。


一瞬目を店内に泳がせたが、僕を見つけて彼女は懐かしい笑顔を見せた。


僕もそれにならい、顔をほころばせる。
軽く手を上げて、声をかけた。













「ミキ」













ミキも軽く手をふり、僕のほうへと駆け寄ってきた。

走り方は、昔と何一つ変わっていない。


僕の前の席に腰をおろし、ミキは言った。


「久しぶり!」


僕も雑誌をたたみ、笑顔で言う。


「久しぶり」