彼女と目があう。
透き通った瞳が、真っ直ぐに僕を見つめる。


『あたしも好き』


…今、そう言ったよな?

目の前の彼女が、そう言ったんだよな?

僕に向かって、そう言ったんだよな?



「…口、あいてる」
「え」

あまりにも唐突で、僕は口を閉じるのも忘れていた。

「大体、好きでもない人と毎日一緒に帰るほど、あたしだって暇じゃないんだから」
「…そ…だよな」

間抜けな返答をしながら、徐々に現実味がわいてきた。


彼女が、僕を、好き。


夢じゃなくて、幻想でもなくて、これは現実なんだ。

あり得ないと思うけど、現実なんだ。

僕は初めて、これが夢じゃないことを確認するために頬をつねった。
痛い。確かに痛い。これは確かに現実だ。

そんな僕を見て、彼女はあの仕草で笑った。

僕も頬をつねったまま、思わず笑う。



「ねぇ」

笑うのを止めて、彼女が口を開いた。


「もっかい、ちゃんと言って」

…彼女の目が僕の目を見て、僕の目が彼女の目を見る。

たったそれだけの事なのに、なんだかとても安心した。



僕の気持ち。
伝えたい、気持ち。

今度ははっきりと、彼女の目を見て言った。



「明日可が、好きだよ」