「え…」
戸惑う僕をよそに、秋桜は家に足を踏み入れた。
臆することなく引き戸をガラッと開け叫ぶ。
「おばーちゃーん、来たよーっ」
びっくりする僕の手を引き、広い玄関に足を踏み入れる。
「あーはいはいはい」
パタパタとゆっくりした足音が奥から響き、薄汚れた暖簾がチラと上がる。
そこからのぞいた顔がニコッと優しく笑った。
「あらー、よぅ来たねぇ!待っちょったいねぇ」
この土地の方言だろうか、訛りの入った口調が心を落ち着かせた。
「暑かったじゃろう、今麦茶入れちゃげるけぇね」
「ありがとう。あ、こちら言ってた友達」
ミュールを脱ぎながら秋桜は僕を紹介した。
「あ、初めまして、須川修平といいます」
僕より下にある視線にぺこりとお辞儀をする。
深いしわがより深くなり、クシャクシャの笑顔が向けられた。
「あらー、遠い所からこげな田舎によぅいらっしゃいましたねぇ」
つられて僕も微笑む。
二言三言会話をした後、僕と秋桜は二階の部屋へと向かった。
階段の軋む音や色褪せたカレンダーが、懐かしい気持ちにさせた。



