彼女の細い腕に走る無数の線。
いくつかは腫れ上がり、ミミズ腫れの様になっていた。
秋桜は僕の手を払いカーディガンの袖を伸ばす。
…リストカットだった。
「…なんで?もうずっとやめてたじゃん」
沈黙を破り、僕は聞く。
出会ったばかりの頃していたリストカットも、半年以上はもうしていないはずだった。
「…言ったじゃん。意味なんかないって」
はきすてる様につぶやく秋桜。
視線は決して合わさない。
「嘘」
僕は、彼女の嘘を見抜いていた。
「もし本当にそういう理由なら、秋桜は長袖なんか着て隠したりしないはずだろ。出会った頃みたいに」
秋桜の眉間のしわが一層深まる。
以前やっていたリストカットと今のそれとでは、理由は違うはずだった。
じゃなきゃ隠したりするはずがない。
何も言わない秋桜にため息をつき、僕は手を伸ばした。
「とりあえず、新しい傷だけはちゃんと手当て…」
「触らないでっ!」
彼女の声と振り払われた手の音だけが、部屋に響いた。



