……………



「アスカ!!」


緑の芝生が広がる道を、1人の少年が駆けてきた。
車椅子の上の長い茶色い髪がさらっと揺れる。

近づいてきた少年を車椅子の上の膝で抱き止める。


「エル、そんなに走って大丈夫なの?」

穏やかな笑顔と、優しい声。

「うん!今日は先生がスクール出ていいって!アスカ、今日はくるだろ?」
「うん、今日は行くわよ」
「やった!!アスカのクラスは楽しいから好きだ!」

青い瞳を揺らしニカッと微笑む少年。
彼の横を2人の少女が駆けていった。

「エル!置いてくよ~?」
「あ、待ってサラ!じゃあアスカ、後でね!バイ!」
「バイ、エル」

サラと呼ばれた少女を追いかけ、エルは駆け出した。
3人の背中を見つめながら、明日可は目を細める。








「アスカ」


名前を呼ばれて振り向くと、聖典を抱いた女性が立っていた。明日可は優しい瞳をいっそう揺らす。

「シスター」

シスターと呼ばれた彼女は明日可の頭にそっと手を乗せ、慈愛に満ちた笑顔を向けた。