「また明日」


背中に、彼女の声を聞いた。

思わず振り返る。

真っ直ぐな視線を僕に向けたまま、彼女は言った。


「明日、晴れたら…待ってちゃだめかな。いつものとこで」


彼女が投げかけた問い。

答える前に、聞かなきゃいけないことが僕にはある。

僕等に『明日』があるというなら、避けてはいけない。


逃げてはいけないんだ。


僕は固く掌を握りしめて、そして真っ直ぐに、言った。

「…俺たちの関係って…何?」
「え?」

彼女が僕を見つめる。
でも、もう逃げない。

「俺には好きな人がいて、その好きな人には彼氏がいて、それでも毎日一緒に二人乗りして帰るって…そういう関係って何?」
「…何の話?」

わかってくれない彼女に、僕は思わず声を荒げた。

「だからっ!俺は明日可が好きでっ、でも明日可には年上の彼氏がいてっ、それでも一緒に帰るって…」
「ちょちょ、ちょっと待ってよ!」

彼女が僕の言葉を遮る。

「彼氏って何?」
「だからっ、あの雨の日迎えに来てた年上の…」
「え?…お兄ちゃんのこと?」



『オニイチャン』?