ずっと立っているわけにもいかず、僕は少し離れた場所に座った。
所在なさげにしている僕にビールを差し出し、彼女はさっきコンビニで買った大量の食料をざぁっと取り出す。
テーブルの上は、つまみやら何やらで一気にうめつくされた。
僕が彼女に渡した一万円は、これらに姿を変えてしまったのだ。
「さすがに全部は使い切れなかったなぁ。おつり、いる?」
スルメの袋を開けながら言う彼女に、僕は首を振って答えた。
…頭が痛くなりそうだ。
煙草の香りと、香水の香り。
嗅覚が、僕の記憶をかき混ぜる。
すべてを振り切る様に、僕はビールに手を伸ばした。
その手が彼女の左手にぶつかる。
…ドキッとした。
こういうシチュエーションでよくあるときめきとは違う。
僕の心臓をはねさせたのは、彼女の左手首の傷だった。



