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「上がって。一応、綺麗だから」
脱ぎ捨てる様にミュールを転がし、フローリングの床を素足で歩く。
狭い玄関の中で、僕はただ立ち尽くしていた。
一度部屋に入った彼女がもう一度顔を出す。
「なぁにしてんの?早く上がりなって」
サラッと引っ込む黒髪を確認した後、僕はしぶしぶスニーカーを脱いだ。
…なんで、こんなことになっているのか。
あの後彼女は、仕方ないという表情で僕に言った。
「じゃあ、このお金でご飯おごってあげる。それならいいでしょ?あたしのお金として、君におごるって形で。あたしのお金をどう使おうと、あたしの勝手だし?」
これ以上譲歩はしないという彼女の表情に、僕はしぶしぶ頷いた。
それを確認した彼女は、ニコッと笑って歩き出した。
「そんじゃ行こ」
…そして、今に至る。
まさか彼女の家だなんて、僕は微塵も思ってなかった。
彼女曰わく、今の時間帯に開いてる様な店には行きたくないそうだ。
微かに生活感の漂うキッチンを通り、奥の部屋へと足を踏み入れた。



