僕はその灰皿を、カウンターごしに店員に渡して言った。
「…彼女?」
店員は笑顔でそれを受け取り、中身をさっと捨てる。
残ったビールをぐっと飲み干して、カズは呟いた。
「あぁ…まぁ…」
その先を言おうとしないカズ。
僕は軽くため息をつき、カズに言った。
「…気にしてんの?俺のこと。そんな間柄じゃねぇだろ?」
通りがかりの店員に、ビールの追加を注文する。
「いい加減吹っ切れてるって。もう昔のことだろ?」
…カズは、明日可の事を気にしていた。
「…連絡、ないの?」
「あるわけねぇだろ?連絡途絶えてからもう一年だよ?」
嫌みにならない笑い方をしながら、僕は言った。
「もぅ昔のことだよ。だからお前も気にすることねぇって。彼女の話くらい聞かせろよな」
眉間にしわを寄せて笑うカズ。
「ほら、飲め飲め!今日はカズのおごりだし!」
「は?何でそうなるんだよ!」
「昨日給料日だったんだろ?ゴチになりまーす!」
明るく言いながら、僕はビールを一気に飲んだ。
…カズにこれ以上、心配かけたくなかった。



