「…まぁどうでもいいけど」
そう呟くと、彼女は僕の横をすっと通り抜け、部屋を出ていった。
僕の視線に頭があるということは、最低でも170㎝はあるだろう。
通り過ぎたひょうしにふわっと匂いを感じた。
一瞬、錯覚に陥る。
…その香りは、明日可の香水と同じ香りだった。
「…なんで」
思わず口を開いた僕に、彼女は振り向く。
「なんで…切ったりするんだよ」
彼女に背を向けたまま、僕は呟いた。
しばらくの沈黙の後、彼女は冷ややかに言った。
「意味なんてあるわけないじゃん。生きてること自体に、意味がないもん」
『生きて』
遠ざかる彼女の足音と、バタンという扉の閉まる音。
その中で僕は、ただ夕焼けに包まれていた。
…僕の生きる意味。
あの一言の他に、そんなものあるわけがない。



