部屋の奥のカーテンは閉まっていて、『お客様』がいることを現していた。
僕は起こさない様にそっと移動し、奥の診察室の扉を開けた。
…カシャン
金属が、床に落ちる音がした。
正確に言うと、刃物が床に落ちる音。
もっとも僕は、それが刃物だと理解するのに少し時間を要したのだが。
鋭い視線が、僕を刺す。
片膝を立ててデスクの上に座る女の子。
彼女の手のひらから、その刃物は落ちたのだ。
…時間が、止まった気がした。
僕は状況を全く把握できていなかったが、それに気付いた瞬間に全ての糸が繋がった。
彼女の左手首に走る、赤色の線に。
それは、さっき僕の指先に浮かび上がった色と、同じ色だった。
…リストカットだ。



