卑怯だと、言われるかもしれない。
逃げてるだけなのかもしれない。

事実、カズには『逃げてる』と言われた。
『切り出さなければ、お前の不安は絶対消えない』と。

そんなことわかってた。
わかってて気付かないふりを繰り返してきた。
どうしても切り出せなかったのだ。

僕は、彼女との時間を失いたくなかった。

自分から切り捨てる勇気なんて、微塵もなかったんだ。




…晴れの日は、二週間も続いた。

桜ももう散りきった4月の終わり。
僕がようやく彼女を『明日可』と呼べるようになった頃。


雨は、降ってしまった。


朝、窓の外をぼんやりと眺めながら、しとしとと降る音のない雨が僕の心に染みていくのを感じた。

僕の不安を象徴する雨。

止むことのない雨と、消えることのない不安がリンクする。


…それをあざ笑うかのように雨は朝から降り続き、放課後になっても止む気配を見せなかった。