『シュウ』
彼女が僕の名前を呼ぶ。
カズやタケが呼ぶのとは全然違う。
自分の名前が、彼女の声で呼ばれる。
まるで自分の名前じゃないみたいに、透明で綺麗な響き。
やべぇ、かなり嬉しい。
「シュウ?」
「いや、全然!全然迷惑なんかじゃない!むしろ大歓迎!」
「え?クッションが?」
「いや、じゃなくて名前…」
テンションが上がりすぎて、思わず言ってしまった一言。
焦って口元を押さえた。
「あ、名前?シュウの友達が呼んでたから…真似しちゃった」
「あ、全然、うん。シュウでも何でも呼んじゃって!うん」
「じゃあ、遠慮なく」
彼女が微笑む。僕も思わずにやける。
感じていた不安は、気付けば期待に塗り替えられていた。
「じゃあ…帰ろっか」



