……………

「…じゃあ須川は、進学でいいんだな」

夕方の教室、向かい合った窓際の席に、僕とヒロミはいた。

「正直、ほんとに厳しいぞ」
「うん…わかってる。でも…」

進路希望の調査表から目をそらさずに、僕は言った。

「今の俺にできることって、やっぱり受験だと思うから」

真剣な僕の目を見て、ヒロミはふっと笑った。


「…わかったよ。できる限りのサポートはする」

ほっと胸をなで下ろす。
正直、反対されると思っていたからだ。

「その髪も、決意の現れなんだろうからな」

慣れない黒髪をくしゃっとしながら、僕は苦笑いをした。
夕日が、教室を赤く染める。


「…俺さ」

窓の外に視線を移し、僕は話し始めた。

「今まで、どっかでずっと甘えてた。強くなりたい、守れる様になりたいって言いながら…足下はふらついてた。多分…、一番、『自分』から逃げてた」

視線をヒロミへと向ける。

「なんか、ようやくわかった気がする。あの日、ヒロミが言ってた『自分の足場』ってやつ…。そこから、始めなきゃいけないってことが」