聞き覚えのない名字だった。
眉間に紫波を寄せる僕に、ガズが情報を付け足す。

「瀬堂明日可。去年俺と同じクラスだったんだよ。つってもほとんど学校きてねぇけどな。何か事情がある…とか?よく知らねえけど」

カズだけは、一年の時クラスが違っていた。

「何、修ちゃん惚れちゃったとか?」

いつから聞いていたのか、横からにやけ顔のタケが絡んできた。
寝癖のついた髪の毛が、冷やかす様に跳ねる。

「なっ…ちげぇよ!」
「照れんなって!まぁ、瀬堂は密かに人気あったからな。他のクラスの奴らはあんま知らねぇかもだけど、俺らのクラスでは、美人で有名だったね。謎の多い美少女みたいな」

カズが余計な説明を加えてきた。

ちくしょう、何で俺、三組じゃねぇんだよ。