「…こんなことしちゃって…」
僕の腕をそっと握った母さんは、その後の言葉を続けることができなかった。
語尾が、滲む。
母さんの涙が、僕の腕をぬらす。
母さんの指には、何枚か絆創膏が貼られていた。
きっと朝、僕がぶちまけたせいだ。
胸が痛む。
視界が滲む。
「…ごめん…母さん。…ごめん」
僕は、僕より小さい母さんの手を握った。
いつの間に、僕の方が大きくなったんだろう。
…いつの間に、母さんはこんなに小さくなったんだろう。
いつも偉そうにしてる姉貴も、泣いていた。
姉貴の泣き顔を見たのは、小学生以来だった。
…僕は、何を考えてたんだろう。
立ち止まって、深呼吸して、ゆっくり周りを見渡してみれば、こんなにも沢山大切な人がいる。
こんなにも大切で、愛しい人たちが。



