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空を見上げると、いつからいたのか沢山の星達が僕等を見下ろしていた。
「…あの日みたいだね」と、明日可が呟く。
初めて、キスを交わしたあの日。
きっとこの星達は、あの日からずっと僕等を見下ろしていた。
なにも、変わってなんかいなかった。
ただ僕等が、目をそらしていただけだった。
少し肩の力を抜いて、あの日の様に空を見上げたら…。
ほら、こんなにも息ができる。
「…帰ろっか」
手を握る。
立ち上がる。
そしてまた、歩き出す。
『今』を歩き出す。
…行きでタクシー代をすべて使ってしまった僕等は、時間をかけて歩いて帰った。
明日可のペースに合わせ、休憩をしながら、一歩一歩現実へと戻っていく。
あんなに嫌だった現実の世界が、不思議と温かく感じた。
ああ、そうか。
ここには、沢山の『命』があるんだ。
みんなが、生きてる世界なんだ。
…太陽が目を覚ましかけた頃、僕等は病院へとたどり着いた。



