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やがて辺りは本格的に暗くなり、街の光がほのかに灯り始めてきた。
僕等は張り付いた様に、ベンチに座っている。
お互いの手だけは、しっかりと握りしめて。
街から鐘の音が聞こえた。
毎日夜の九時になると鳴り響く鐘の音。
理由は知らない。
でも僕は、昔この鐘の音が嫌いだった。
この音が鳴ると、決まって母さんが、「早く寝なさい」と言い出すからだ。
まだ眠くないのに、暗闇へと連れて行こうとするあの音が、嫌いだった。
…でも今は、この音が導いてくれる様な気がした。
この音は、合図だ。
僕は、すっと立ち上がった。
明日可もゆっくりと立ち上がる。
見つめる先は、同じだった。
小さく、でもはっきりと、僕は呟く。
「行こうか…」
…闇の中で、明日可が小さく頷くのがわかった。



