……………


はっきり言って浮かれていた。


あの約束をした次の日は、びっくりするくらい早起きをした。

朝食も和食なんか食べちゃって、いつもは軽く寝癖を隠す程度の髪も念入りにワックスでセットしたりして。

食パンをかじっていた姉ちゃんに、「今日は雨?」とまで言わせた程に。

そう、はっきり言って『かなり』浮かれていた。


浮かれすぎて、重大な事を忘れていたのだ。



…それは朝、カズに報告していた時に発覚した。


「で、例の彼氏はどうなったんよ?」
「…あ…」


『彼氏』


そういえば、そんな奴もいた。

長身で、年上で、端正な顔立ちの。
真っ向勝負じゃ勝てそうもない相手だ。

「忘れてた…」
「バカだろお前」

カズが呆れた様にため息をつく。