「…何でもないよ」
僕は、なるべく心を落ち着かせながら答えた。
「そう…」と小さく呟く明日可。
その横顔を見て、また痩せた気がした。
軽く、明日可の手を握る。
「…シュウ」
窓の外を見ながら、明日可は言った。
「屋上、行きたい」
…看護師さんに許可をもらい、僕等は屋上に向かった。
昼時だからか、屋上には誰もいない。
シーツだけがはためく中で、僕の足音と明日可の車椅子の音だけが響いた。
車椅子を固定して、フェンス近くのベンチに腰掛ける。
真っ青な空。
僕等が初めてデートした日を、思い出す。
あの日も確か、こんな青空だった。
「…シュウ」
明日可の声の方へ、顔を向ける。
空を見つめながら、明日可は呟いた。
「…永遠って、信じる?」
視線を空へと戻す。
果てのない青空。
「…俺らの生きてる世界には、ないと思う」
…僕は初めて、この質問に答えた。



