……………
面会時間ギリギリまで屋上にいた僕は、ようやく重い腰を上げた。
院内は、一般客はほとんどいない。
静まり返った廊下を、僕の足音が占領する。
…ゆっくりと、明日可の病室を開ける。
カラカラと不規則な音が響いた。
「…シュウ…?」
暗闇から、明日可の声が響く。
部屋には、明日可以外はいなかった。
僕はなにも言えないまま、明日可の元へと近寄る。
いつもの椅子をガタンと引き、腰を下ろした。
…明日可の顔は、どうしても見れなかった。
しばらくの沈黙の後、明日可の消え入りそうな声が届いた。
「…びっくり、させちゃったよね…」
ゆっくりと顔を上げる。
僕の泣きそうな顔を見つめながら、明日可は小さな声で呟いた。
「…ごめんね…」
何か一言でも発すれば涙が抑えられない気がして、僕は黙ったままでいる。
そんな僕に向かって、明日可は繰り返し繰り返し言う。
「…ごめんね、ごめんね…。つらいよね…。ごめん…ごめんね…」
たまらなくなって、僕は明日可の手を強く握った。
おれてしまいそうな、明日可の小さな手。



