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―3月―
病室の窓からは、桜が微かに見える。
チラチラと、薄い花びらが舞っていた。
ゆっくりと、落ちていく花びら。
「うん、顔色もいいし、今日は調子がいいみたいだね」
明日可の隣で、斎藤先生がカルテをつける。
明日可の視線は、窓から離れない。
「…ここの桜は今が見頃だね」
そんな明日可に気づき、斎藤先生は声をかけた。
2人で窓の外を見つめる。
「…ねぇ、先生」
窓に写る先生を見つめながら、明日可は言った。
「ん?」
先生も、窓に写る明日可に返事をする。
「…あたし、また悪くなったの?」
窓の外で、桜が再び舞い始めた。
…一瞬戸惑った斎藤先生に向かって、明日可は続ける。
「薬の量が減ってるからさ。もしこれがいい傾向なら、先生言ってくれるはずだもん。だから…」
視線を窓からはがし、先生の方に向き直る。
「ちゃんと、言って欲しいの。あたしのことは、あたしが一番知っておきたいから」
…真っ直ぐな、明日可の目。



