ヒロミは、ゆっくりと立ち上がる。
僕の目線の先に、きれいに磨かれた靴先があった。
ゆっくりと顔を上げる。
「…今の現実としっかり向き合え。じゃなきゃお前の言う『意味』なんて見えてこない。今のままじゃ、瀬堂と2人して駄目になるだけだ」
魚の匂いのする民家から、子供たちの笑い声が聞こえる。
「…瀬堂を守りたいって言ったのは、お前じゃないのか?」
…母さんに見つからないように、部屋へ入る。
暗い部屋。
僕は電気も付けずに、そのまま床に転がった。
…ヒロミの言う通りだ。
僕は、明日可に逃げている。
明日可といれば、向き合いたくない現実から逃げられるから。
何も、考えなくていいから。
それは、明日可もまた現実から逃げようとしているから。
2人だけの世界。
リアルの存在しない世界。
焦点の合わない目で部屋の天井を見つめながら、ぼんやりと思った。
…いいじゃないか、どこまで落ちたって。
2人でいれるなら。



