…自転車をこぎながら、姉貴の言葉を反芻する。
『内側の声』
いつか見た夢を思い出す。
僕に何かを伝えている明日可。
それが何なのか、わからない。
…結局僕はその程度の男なんだ。
いくら背伸びをしても、強くなるなんて言っても、僕は姉貴の恋人のようには到底なれない。
夜風はまだ冷たい。
いくら自転車をこいでも、先は暗いままだ。
…わかってるんだ。
僕がこんなにも不安なのは、明日可のせいだけじゃない。
何よりもまず、僕自身の問題なんだ。
…なぁ、明日可。
必死にもがいていたあの頃の僕等は、きっと『今』を見失ってた。
見えない未来に不安ばかりを募らせ、見える現実から逃げていたんだ。
今ならそれがわかるのは、僕が大人になったからじゃない。
…『今』がどれほど大切だったか、身にしみて実感したから。
君が、教えてくれたから。



