…僕たちはとりとめのない話をしながら、駅に向かった。
ラッシュの時間はすぎていたが、それでも人は少なくない。
駅の駐車場に、見覚えのある車があった。
よく、家の前に止まっている車。
「あ、雅もう来てるみたい」
その車を見ながら、姉貴は言った。
車の側でタバコを吸う男性と目が合う。
サラッとした清潔感のある髪に、パリッとしたスーツ。
スラッと長い手足が、ここからでもよくわかる。
…男の僕から見ても、かっこいい。
彼は僕に向かって軽く会釈をした。
僕も急いで頭を下げる。
「じゃ、俺帰るわ」
身内の恋人と会うのは、どうも気恥ずかしい。
帰ろうと自転車をまたいだ僕に、姉貴は言った。
「外に出す声が、全てじゃないんだからね」
振り返る僕。
「内側の声も、ちゃんと聞いてあげなよ」
…そう言うと、姉貴は車の方へ走って行った。
タバコを携帯灰皿に捨てる彼。
彼に駆け寄る姉貴。
車に乗り込んだ2人を見ながら、僕は2人の安定した繋がりを感じた。
僕と明日可には、あるようでないもの。
絶対的な、安心感。



