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僕は今、病院のエレベーターに乗っている。
ここに来るのは、久しぶりだ。
…できればもう、二度と来たくなかったけれど。
妙に冷静な頭で、昼のミキの言葉を反芻していた。
…「明日可…春休み入ってすぐくらいから、ずっと入院してるの。詳しい病状とかは知らないんだけど…ってかね、ミキもあんまりお見舞い行けてないんだ」
一呼吸置いて、ミキは続けた。
「誠さん…明日可のお兄さんがね、今はあんまり来ないで欲しいって…。なんか、今少し不安定らしくて…。病状がっていうより…精神的にね。メールとかはよくするんだけど、そこでは全然普通だし、心配すると、逆に明日可の負担になるから…」
そう言いながらも、ミキの表情は曇っていた。
「今は…そっとしておいてほしいって誠さんも言ってるし。不安だけど…今ミキにできることは、明日可の負担にならない様に、ミキらしくいることだと思うからさ」
…ミキが新しく友達を作ったのも、きっと明日可に心配をかけないため。
できるだけ明るい話題を、明日可に届けるためなんだ。



