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「そりゃお前、深く考えすぎだって」
ざわついた朝の教室。
僕が投げ捨てたせいで折れ曲がったジャンプの表紙を伸ばしながら、カズは言った。
「俺らまだ高校生よ?んな大げさに考えることねぇって」
「でも…カズも受験するんだろ?」
机の上に顎を乗せて、僕は呟く。
「そりゃまぁな。親の希望でもあるし…」
伸ばし終えたジャンプをカバンにしまう。
…やっぱりカズも受験か。
しまわれたジャンプを見つめながら、僕は呟いた。
「…漫画家にでもなろうかな…」
「いや、無理っしょ」
「だよねー…」
意味のない会話を繰り広げる。
漫画家だけじゃない。
僕になれそうなものなんて、何も見つからない。
…乾いたため息が、口から漏れた。
「とりあえずでいいんじゃねぇ?とりあえず何かやってみたら…そっから見つかるかもだしさ」
次の時間の数学の教科書をパラッとめくりながら、カズは言った。
とりあえず…か。
とりあえず受験してみても、受かるわけないと思うけど。
…さすがに口には出さなかったが、僕の心にはその言葉しか浮かばなかった。



