コスモス


「え…これ…?」

かごに入れられた可愛らしい紙袋の意味を、僕は理解できなかった。
少し頬を膨らませて、明日可は言う。

「…もしかして、今日何の日だか忘れてるの?」

…今日?

「え…?今日って2月…」

あ…。

思い出したというのが表情に出ていたのか、明日可はふうっとため息をついた。


「バレンタインを忘れる男の子がいるとはね~」


…すっかり忘れていた。

今日は、2月14日。

バレンタインじゃないか。


「わり!まじすっかり忘れて…」

焦る僕を横目に見た明日可は、ふっと微笑んだ。

「…まぁ、さっきのセリフに免じて許そう」

ひひっと笑う明日可。
顔を赤める僕。

明日可はそのまま、自転車の後ろにぴょこんと乗った。

「二人乗りしよ!」
「…寒ぃよ?」

顔を赤くしたままの僕はそう言いながら、自転車をまたぐ。

「大丈夫大丈夫!シュウがくれたマフラーがあるもんっ」
「よく言うよ…」

そう言いながら、僕はペダルを漕ぎ始めた。

冬の風が僕等の横を、ヒュウと通り抜けた。