コスモス


ふっと笑って、明日可が近づいてきた。

一瞬、体が強ばる。

「…シュウ…ミキと、キスしたんだよね」

上目遣いで、明日可が聞いてきた。

ドキッと、心臓が音を立てる。

「…あ…うん…」

約束した手前よけいなことは言えず、僕はそれだけ言った。

「ふぅん…、そっかー」

考える様な仕草の明日可。
何故か僕は焦ってしまう。

「ご…ごめん…。とっさのことで…」

…言い訳じゃんか。

自分の情けなさに泣けてくる。

「でも…」

言い訳に聞こえても何でもいい。
それでも、明日可には伝えたい。


「俺が…キスしたいって思うのは…明日可、だけだから」


自分で言いながら、顔から火が噴き出す。
僕の周りだけ温度が急上昇したみたいだ。

一瞬目を丸くした明日可だか、すぐにいつもの笑顔に戻った。

明日可は自転車のかごに、カバンから取り出した小さな紙袋を入れる。


「上出来です」


意地悪そうな笑顔で、明日可は言った。