コスモス



……………

次の日の放課後、げた箱には見慣れた薄桃色のマフラーがあった。
同系色の手袋をはめたその手は、明日可の顔をすっぽり埋めている。


…内心、凄くほっとした。

もしかしたら、明日可はもういつものように待ってはいないのではという不安が、僕の中にはあったからだ。

そっと明日可に近づく。

僕に気付いた明日可は、少し顔を上げる。


…僕等は、そのまま言葉を交わすことなく帰路についた。










…「…寒いね」

先に口を開いたのは、明日可だった。

「…うん」

自転車を押す手を見つめながら、僕も口を開く。
何を言うべきなのか、僕にはわからなかった。

そんな僕を察したかの様に、明日可が話し出す。

「シュウ…。一個だけ、約束しよ」

僕は足を止める。
しばらくして、明日可も足を止めた。

「約束?」

少し前に立ち止まる明日可に、僕は言う。

「うん…約束。…隠し事はしないっていう、約束」

前を向いたまま、明日可は続けた。