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カラカラと、夜の闇に車輪の音が響く。
歩道側にミキを歩かせながら、僕たちは帰り道を行く。
先に口を開いたのは、ミキだった。
「…今日の明日可の言ったこと、あれ…」
「うん、大丈夫。…本気なんて、思ってないから」
ミキの言いたい事を察した僕は、その言葉を遮って言った。
「そっか…」
暗い中でも、ミキの顔が微笑んだのがわかる。
ミキの家の近くの交差点で、ミキは立ち止まった。
「…もう、わかってると思うけど…。明日可、いつも不安定なの」
僕も、足を止める。
「本当に、ちょっとした事で…明日可の心は一気に塗りつぶされるの。…病気への恐怖に、塗りつぶされるの」
…それは、僕も感じていた。
明日可は強い。
僕なんかより、よっぽど強い。
でも凄く…凄く、脆い。
繊細なガラス細工の様に、乱暴に触ったら一瞬で壊れてしまう。
「これからもきっと…きっと何度も、明日可の心は押しつぶされると思う。何度も…恐怖に迷うと思う」
泣きはらした目が、真剣に僕を見つめる。
僕の眼差しもまた、真剣だった。



