明日可の細い指が、ミキの涙をすくう。
それでも止まらない、ミキの涙。
「…わないで…」
絞り出した様なミキの声に、僕は顔を上げた。
「…言わないで…お願いだから…死ぬだとか、そんな…そんなの…言わないでよ…」
喉の奥が、ぐっと締め付けられた。
下唇を、ぎゅっと噛む。
「明日可が…明日可がそんなこと言わないで…。いやだよ…そんな…そんなこと、絶対、絶対…」
明日可がそっと、ミキを抱き寄せる。
今にも泣き出しそうな、明日可の表情。
それでも強く、ミキを抱きしめた。
「お願いだから…そんな…」
「うん…」
「言わないで…そんなこと、絶対…」
「うん…」
「絶対…」
「…うん」
明日可の声が、少しずつ滲んでいく。
僕はただ唇を噛みしめたまま、自分の足元を見つめていた。
「…死なないよ…。明日可は、死なないよ」
自分に言い聞かす様な、ミキの声。
ゆっくりと、明日可が言った。
「うん…ごめん、ごめんね…」



