「…バカじゃない?」
ミキの震える声が、明日可の部屋に響いた。
「バカだよ…明日可はバカだよ!幸せになれないって何?そんなの…そんなの明日可が決めることじゃないでしょ!?」
僕は、ただ呆然とミキを見つめていた。
こんなミキ、初めて見た。
「明日可…自分で言ったじゃん!須川君は明日可が好きだって、そう言ったじゃん!それだけじゃ…それだけじゃ駄目なの?幸せの条件は、それだけじゃ駄目なの!?」
…幸せの、条件。
僕たちを取り囲む問題や状況を全て取り払って、それでも心に残るもの。
明日可を、好きだと思う気持ち。
「病気だとか…そんなの関係ないよ。そんなの…全然…」
ミキの言葉が止まる。
僕はミキに手をのばしかけたが、その動きを止めた。
僕の代わりに手をのばしたのは、明日可だった。
震える明日可の手が、ゆっくりとミキの頬に触れる。
僕は少し視線を落とした。
ミキの小さな手は固く握られていて、それは微かに震えている。
…ミキは、泣いていた。



