彼女が、見えた。


前の方にいる彼女。隣の列だから三組。

肩より少し長い髪は、春の日に透けて茶色く見えた。

彼女も後ろの友達と話していて、斜め向きの顔が見える。

遠くからでもわかる黒目がちの大きな瞳が、時折揺れるように微笑む。



「修平?」



…衝撃、だった。



「なぁカズ、あの子誰?」

彼女から目を逸らさないまま、カズのシャツを引っ張った。
ガズが一瞬よろける。

「どの子よ」
「ほら、今あのショートの子と話してる、ストレートの子」

彼女にばれないように、でも必死に説明する。
その間にも、何度か彼女の瞳が笑った。


「あぁ、瀬堂じゃん。あいつ進級できたんだ」
「セドウ?」