はっと気付いて時計を見る。

針は、45分を指していた。

「わっやべ!もうこんな時間か!ミキ、もう行こ…」



…一瞬、何が起こったのかわからなかった。

確かに小さなベンチだったけど、2人の間には少しは距離があったはずだ。

なのに、今ミキと僕の間に距離はない。


…ミキの顔が、僕の顔の目の前にある。


いや、目の前にあることはそこまで重要じゃない。

重要なのは、触れていること。


ミキの唇が、僕に触れていること。




…ゆっくり離れたミキは、そのまま立ち上がって駆け出した。

呼び止めることすら、できなかった。



今、俺…
ミキと、キスしたのか?


なんで、ミキが…?




まばたきを忘れた僕は、しばらくその場を動けなかった。

止まった思考回路の中で、何故かふいに、コスモスは秋の桜だったなと思い出す。


…冬の桜の様な雪の中で、僕はミキとキスをしたのだ。