「シュウ」
ミキの声に振り向く。
窓の外を見たまま、ミキは小さく呟いた。
「おやすみ」
僕も、そっと呟く。
「…おやすみ」
…部屋に戻ったら、三人はもう寝ていた。
時計を見たら、針は二時半を指している。
昼間のスキーもあり、さすがに疲れた僕もドサッとベッドに身を沈めた。
ぼんやりとした頭の中で、ふと、何かに気付いた。
でも、それが何かを理解するより先に、僕の思考は停止した。
重い瞼を閉じて、ゆっくりと夢の世界へと引き込まれていく。
『シュウ』
夢の入り口で、明日可の声を聞いた気がした。
…あの時聞いたのは、多分明日可の声じゃない。
『シュウ』
あの日ミキは、初めて僕をそう呼んだ。
夢の入り口で僕が気付いたのは、そのことだったんだ。
歯車は、少しずつ動く。
誰も、止めることなんてできなかった。
例え気付いたとしても、もう無理だったんだ。
…遅かったんだ。



