唇を離した後、明日可がそっと呟いた。
「…シュウがいてくれて、嬉しい」
僕は明日可を抱き寄せる。
僕の腕にすっぽりと収まってしまう程小さい明日可に、僕はこんなにも幸せをたくさんもらっているんだ。
嬉しいのは、僕の方だ。
「…ほんと、ありがと」
こんなにも幸せな誕生日は、きっと生まれて初めてだ。
腕の中で微笑むこの女の子を絶対に幸せにしたいと、僕は強く思った。
…階段の柱の裏で、ミキは2人の影が重なるのを見ていた。
きつく、目をつむる。
キュッとスカートの裾を握って、その場を駆け出した。
ゆっくりと、ミキの目からこぼれた滴が、柱のそばに落ちる。
そのシミもまた、夕日を受けてオレンジ色に染まった。