……………


「その噂なら、聞いたことある」


カズの一言で、僕のテンションはこれ以上下がらないってところまで下がった。


ザワついている教室。
黒板には、『二時間目:自習』の文字がある。
生徒達は、まるでこの時間のためだけに学校に来ているとでも言わんばかりに、生き生きとおしゃべりに花を咲かせていた。

その隅っこで、この華やかな自習時間にまるで相応しくないくま付きの僕にカズは続ける。

「去年、瀬堂が学校来る時よく一緒に門のとこまで来てた奴がいるんだよ。長身で、年上っぽい男」
「少し髪長めの?なんか、雰囲気がTOKIOの長瀬みたいな…」
「そうそう!そんな奴!」

昨日の傘の下にいた人物を思い浮かべる。
ガズの話の人物は、明らかに昨日の男だ。

「何、会ったの?瀬堂の彼氏と」
「会ったっつーか…昨日放課後瀬堂さんと少し話して…その…彼氏?らしき人が迎えにきたから…」

少し伸びた髪をクシャクシャっとしながら答えた。
自分で言っておきながら、『彼氏』という言葉にイライラする。